2014/09/15

Sanctioned Murderの日本語訳

TESOの書籍"Sanctioned Murder"(UESPリンク)の日本語訳だよ。

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認可された殺人
ムジャーラ・ヴィリアン 著

引退したモラグ・トングの暗殺者による日記からの抜粋

 ムジャーラ・ヴィリアンの日記からの引用

 記憶している限り、私の生涯はたったひとつに捧げられてきた。他人の命を奪うことだ。無差別な殺人などではない。法に背いた者、モロウウィンドの大家に害なす者、神聖なるトリビュナルの教えを汚した者が標的だった。

 彼らの命は私に刈り取られるべきものだ。私への供物とも言えるだろう。彼らには死に値する理由があるからだ。そして、私は殺しに熟達していた。

 標的が私の接近に気づくのは稀である。犯した過ちを広く知られている者も居る。罪なき者の殺害、大家からの窃盗、他人の恋人と床を共にした、という場合すら含まれる。にも関わらず標的は潔白を主張するのだ。私が間違っていたのかもしれない。人違いであったのかもしれない。だが喉元に刃を突きつけると、驚くほど正直に自らの罪を洗いざらい告白してくれるのだ。

 彼らを一人ずつ殺していく。素早く喉を掻き切って。薄い肉を開き、細い静脈を綺麗に断ち切って。叫び声を上げようとするが、彼らに許されるのは肺を満たす真紅の血潮で溺れることだけだ。

 私は死に喜びを見出した。唯一無二の喜びで満たしてくれる。それが私の人生だ。それが私という存在だ。

 民は私を恐れ、愛する。私の兄弟姉妹と同様に。我々を押しやり、必要となれば抱擁する。

 時に英雄として讃えられる。あるいは殺人者として。権力者が闇の刃の餌食となれば、その命令を下した者が我々に従うのだ。

 だが、かつて失敗があった。手順に欠陥があったのだ。我々はあまりにも完璧に成長してしまった。正義の為に無垢なる血を流してしまったのだ。

 単純明快な契約においても、こうした結果に終わり得る。法は間違いを孕んでいるものだ。それが過ちを生む。契約は嘘をつかないが、常に正しいとは限らない。ほんの小さな、一見無害に思える行動が、結果として大勢を滅ぼす潮流となることもある。

 愚かな自尊心は判断を鈍らせる。激情に任せて、血で壁にこう書きなぐるのだ。「モラグ・トング」だと。それは大きな声となって世界中に響き渡り、我々は規律も法もない冷酷な殺人鬼と呼ばれるようになった。

 常に潜み隠れて動いていたトングが、突然衆目に晒されることになった。奴らは我々を闇から光の下へと引きずり出すのを望んでいるのだ。我々は更に深く、闇へと身を隠した。契約は少なくなり、仕事も小規模になった。大家の貴族の暇つぶしとして使い走らされた。我々は耐えた。

 そして、我々は服従した。忠実であり続けた。どれほどの困難に直面しようとも、命を賭けて守ると誓った信義に背を向けはしない。世の全てが我々を見捨てたとしても、それは変わらない。

 導き手達は我々に囁きかける。忍耐強くあれと。我々の正義の手が今一度、世界を掌握する日が必ず訪れると。押し寄せる闇はやがて、世界を覆い尽くすだろう。

 モラグ・トングは、再び必要とされる。必然の存在となる。
 
 だが私は老い、かつての力を失ってしまった。ヴヌーラへの旅の準備をし、若い者へ我が任を譲らねばならない。経験と思慮がまだ浅い者へと。私の息子と娘もやがて剣を取るだろうが、我々の偉大さを未だ知らないのだ。彼らがモラグ・トングの新たな礎を築いていかねばならない。

 戦の闇が訪れ、何人たりともその怒りからは逃れられない。

 モラグ・トングは、耐え忍んできた恨みを忘れてはならない。備えねばならない。

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トング(Tong)ダンマー語でギルドの意

あわせて読みたいのが『光と闇:死の同士たち』(スカイリム図書館さんリンク
この本に出てる、壁に血でどうこうという記述はレマン皇帝暗殺の話ですね。
そしてヴヌーラ島に引退した工作員を送るって話も。もしかしてこの手紙を書いたのはVirianさんだったりして?